図書館の司書さんが「リブラリアン」なら、プラネタリウムの解説員を「プラネタリアン」という。もっとも、これは欧米での話。日本でも一部の自意識過剰な解説員が自称するようだが、「プラネタリアン」なんて言ってみても、ほとんど一般の人にはわからないだろう。「星空の解説をする人」という以上に、原語ではもっと深い意味合いをもつ呼称のはずだが、この国で名実共に浸透するまでには、まだまだ時間がかかるような気がしている。
プラネタリウム解説員の仕事は、たんに天文的な知力だけでは務まらない。天文台や大学の研究者と決定的に違うのは、お客様あっての商売だということだ。星空のナビゲーターはもちろん、番組のクリエイター、イベントのプロデューサー、渉外やら広報やら接客やら、一人で何役もこなせる人間力が求められる。それなりにシンドイことも多いが、そんなときは初心に返ってみる。なぜ星空が好きなのか……と。自分の原点は小学3年の頃だったか、一冊の本に出会ったこと。それが、絵本『おさるのジョージ』シリーズの作者としても知られるH.A.レイ著『星座をみつけよう』だった。
星座をみつけよう H.A.レイ 文・絵 /草下英明 訳 福音館書店 1969
手描きタッチのイラストは親しみやすく、星座の形や神話が紹介され、さらに星の明るさや大きさ、距離といった科学的な知識も散りばめられていて、好奇心旺盛な子供心はすっかりトリコになってしまった。歯切れの良い文章にもワクワクしたが、それはひとえに草下英明氏の名訳のたまものにちがいない。
この本で感心するのは、独特の星座の結び方である。星座解説書を見ていると、なぜこの星の並びがこんな星座になるのか、理解できないことが多い。プラネタリウムで星座絵を重ねてみたところで同じだ。ところが本書ではレイ氏のウイットもあるのだろうか、ほとんどの星座がそれらしい形に見えるよう工夫されているのだ。
5等星まで駆使しているので、都市部近郊の夜空ではそのように結ぶことは難しいのだけれど、それでも想像をかきたてられ、星座をさがしてみたい気分になる。実際に小学生の頃、本書と首っ引きで近所の空き地から星座さがしをよくしたものだ。冬の夜空にペルセウス座の一部を見つけることができた時は、本当にうれしかった。プラネタリアンは、このワクワク感を忘れてはいけない。
どうしたら、そのワクワク感をお客様に伝えることができるだろうか。この本の行間にはそのヒントがあるような気がして、今でも手ばなせないのである。
+追記++
数年前、息子と東京・上野の国際子ども図書館に行ったら、「大空を見上げたら ~太陽・月・星の本~」という展示会をやっていて、そこで思いがけず『星座をみつけよう』の原書を見た。本文が英文であることをのぞけば、イラストから何からページ立てまで日本語版と変わらないようだったが、どうも姿がいいのである。ガラスケースの中で開かれた状態で、手には取れなかった。が、不思議とおしゃれに見える。アルファベットが並ぶだけで、アートブックのようなたたずまいが表出される、造本術の魔力。ブックデザイン・フリークとしては大いに心引かれ、さっそくハードカバーを取り寄せてしまった。